テスラが示す近未来 – 2026

※この記事はTeslaが2024年10月12日に発表したWe, Robotイベントの動画を元に構成しています。画像はすべてイベントからのキャプチャです。

先日Teslaから発表のあった We, Robot イベントにて以下の発表があった。

  • Robotaxi(ロボタクシー)
  • Robovan(ロボバン)
  • Optimus(オプティマス)

詳しくは後述するが、このイベントにてロボットが人々の世界をどのように変えるのかが示されていた。街にはハンドルもペダルもない完全自動運転の車が走り回る。20人が乗れるバスも自動運転。移動のために人が運転する必用が無くなるだけでなく、車自体を所有しなくてもよくなる。移動したいときに、必用に応じてスマホで車を呼ぶだけ。

車を所有しないから、駐車場も不要になる。イベント会場など人が集まるところにはこれまで、大きな駐車スペースが必要だったがそれも要らなくなる。広大なパーキングエリアは快適な緑の空間に置き換えることができるようになる。

ロボタクシー – Robotaxi

今回のイベントのメイン。2人乗りの車で、ドアは乗り降りしやすいように斜め上に跳ね上がるように開く。このドアについてはマツダが2023年に発表したアイコニックSPによく似た感じ。これまでサイバーキャブとかModel 2とか言われていたものがこれにあたるか。

運転は完全自動(FSD … Full Self Driving)のみとしていて、車内にはハンドルもアクセル・ブレーキペダルもない。車内にあるのは2つのシートと、21インチの大型タッチスクリーン。このスクリーンで行き先を設定するだけでなく、移動中に映画を観たり、オンラインミーティングができたりする。

このロボタクシー、無人なので従来のタクシーに比べて圧倒的に乗車料金は安くなるとしている。イーロンマスク氏の発表では1マイルあたりの乗車料金は30〜40セントになるだろうとのこと。1ドル=149円としても1kmあたり約33円というのだから恐ろしく安いことになる。充電はワイヤレスで行われ、車内清掃は無人で行われるとのこと。

このロボタクシーは一般購入もできるとのことで、その場合の車両価格は3万ドルを切るだろうとのこと。1ドル=149円として約450万円以下。円安が是正されれば350万円を切ることもあり得そう。ハンドルやペダルのない車を所有するというイメージはなかなか付かないが。

エクステリアはサイバートラックのような傷に強そうなボディ表面。タクシーとして年中走り回っていても十分に美しく耐久性がありそうな感じ。それでいてサイバートラックのような直線的ではないボディデザインがとてもかっこいい。

ロボバン – Robovan

2人乗りのロボタクシーだけでなく、多人数が乗れるモノとしてロボバンも発表。

こちらは20人が荷物と共に乗れる。

人型ロボット – Optimus

Teslaはこのイベントにて人型ロボットも発表。このオプティマスと名付けられたロボットはこれまでも何度かイベントにて発表されていたが、今回は何体も使って大規模に発表されていた。「Teslaは単なる自動車メーカーではなく、AI企業である。AIで動く機械にタイヤが付くと車になるが、タイヤの代わりに手や足を付けると人型ロボットになるだけ」としてAIが支えるこれからの暮らしというコンセプトでデモが行われた。

Teslaは「人型だからこそ人の代わりに作業ができる」としている。今回のイベントではオプティマスが郵便物を受け取ったり、植物に水をやったり、ボードゲームの相手をしたり、家事の手伝いや給仕をする様を動画でプレゼン。実際のイベント会場でも多数のオプティマスが歩き回ったり、ドリンクを提供したり来場者と会話するなどしていた。

このオプティマスロボット、2万ドルから3万ドルの範囲で2026年中には発売したいとのこと。1ドル=149円としておよそ400万円前後で購入できることになる。Tesla CEOのイーロン・マスク氏の言う時期はいつも守られないことが多い。Teslaロードスターなどは数年前に発表があったきり、いまだに発売されていない。それどころか、このイベントでも触れられなかった。実際の発売は2030年を超えるのではとのもっぱらの噂。

イベントを通じて

「無人の車が走り回る」とか「人型ロボットが人の世話をする」というのはTeslaに限らずよくある「未来の姿」として描かれてきた。しかしこれを具体的に、実際の人々の目の前で実演して見せたのは今回のTeslaが初めてと言ってよいのではないか。広大な映画スタジオを借りて行われた今回のイベントでは、ロボタクシーだけでも20台以上、くわえてロボバンやModel 3など従来のTesla車も含めた数多くの車がスタジオ内の街を走り回っており、来場者はそれらに実際に乗ることができた。

ロボットにしてもケーブルに繋がれていないロボットが自由に会場内に登場。会話のあまりの自然さに「実は人がしゃべっているのではないか」と勘ぐってしまうくらい。会話だけでなく、給仕やショーケース内でのダンスなど、まさに近未来が目の前で行われていたことは凄いことだと思う。まさにビデオゲーム「Detroit: Become Human」の世界だ。

これからのTeslaの動向に市場も期待と思ったら、発表翌日のTesla株は10%近いダウン。市場としては2026年とする展開時期の実現性を危ぶむ声など期待よりも失望の方が大きかったか。ただ私は、限られた環境であっても映像だけでなく、実際に目の前でデモを行ったこと、それも大規模なデモであったことから大きく期待が膨らんだ。2026年内にこれらが実現できるとは思わないが、確実に世の中が大きく変わることになるだろう。

個人的には、多くのAI学者が言うように、これだけ高度に機械が人々の生活を支えるようになればなるほど、これらが悪用されないかと心配にはなる。機械が意思(のようなもの)を持つことで人に反旗を翻さないとも限らない。漠然とした不安は拭いきれないが、機械なしには人は一日たりとも生きていけないようになる日は近いのではないか。