テスラが、ハードウェア3(HW3)を搭載した車両では無監督の完全自動運転(FSD)を実現できないと公式に認めた。2026年第1四半期の決算説明会で、イーロン・マスクCEOが明言したものだ。HW3搭載車のオーナーには割引によるアップグレードやトレードイン(下取り)の道筋が示されたが、かつての「HW3でも完全自動運転が可能」とした約束との食い違いが議論を呼んでいる。既存オーナーへの影響を整理する。
HW3とFSDのこれまで
テスラのFSDは、走行中に車載コンピューターがカメラ映像を処理し、AIモデルが運転判断を下す仕組みだ。この処理を担うのが「Autopilotハードウェア」と呼ばれる専用コンピューターである。HW3は2019年4月に登場し、当時テスラは早期購入者に対し、このハードウェアで完全な自動運転が実現できるという前提でFSDパッケージを販売していた。早期に導入したオーナーは、FSDに8,000ドルから15,000ドルを支払っていた。
しかし、FSDのAIモデルが高度化し処理負荷が増すにつれ、HW3搭載車は次第に取り残されていった。HW3向けのソフトウェアは2025年1月にバージョン12.6で更新が止まり、新しいハードウェア(HW4)を積んだ車両がv13、さらにv14へと進化していく一方で、HW3は据え置かれた状態が続いていた。性能の差が、ソフトウェアの世代という形で明確になったわけだ。
テスラが示した三つの道筋
今回テスラが示した道筋は、大きく分けて三つある。一つ目はソフトウェア面での救済だ。Autopilot責任者のアショク・エルスワミ氏は、6月下旬にHW3車両向けの「V14-lite」を提供すると明らかにした。これは現行v14の機能を旧型ハードウェアにも一部もたらすものだ。ただし、あくまで監督下での運転支援にとどまり、無監督FSDそのものを実現する更新ではない。
二つ目がトレードインプログラムである。テスラはかつて掲げていた無償アップグレードの約束に代えて、割引付きの下取りオプションを用意した。今回の発表では具体的な価格は明らかにされていない。三つ目は無監督FSDの展開時期だ。ロールアウトは少なくとも2026年第4四半期を目標とし、地域を限定しながら段階的に進める方針が示された。
「約束」との齟齬と日本への影響
ここで論点となるのが、当初の「約束」との齟齬である。2019年当時、テスラはHW3を完全自動運転に対応するハードウェアとして売り出した。それを信じてFSDを購入したオーナーにとって、今回の「HW3では無監督FSDは不可能」という公式確認は、約束の反故と映りかねない。無償アップグレードが割引トレードインに置き換わった点も、当初の説明との温度差として受け止められている。
日本のオーナーにとっても、この問題は無関係ではない。日本では現時点で無監督FSDが利用できる環境にはないものの、購入時に「将来の完全自動運転対応」を期待してFSDオプションを選んだ人は少なくない。自車のハードウェアが何世代目かは、将来受けられる機能の範囲を左右する要素となる。
今回の発表は、自動運転の実現がハードウェアの性能に強く依存することを改めて示した。テスラは無償アップグレードからトレードイン割引へと方針を転換しており、HW3オーナーは今後の具体的な価格条件や、地域限定で始まる無監督FSDの展開状況を注視する必要がある。約束と現実のギャップをどう埋めるか、テスラの対応が問われる局面だ。
参考:Tesla confirmed HW3 can't do Unsupervised FSD but there's more to the story(Teslarati、2026年6月20日)

