長らく低迷していた欧州のEV需要が、燃料価格の高騰を追い風に息を吹き返している。この流れを受け、テスラはドイツの主力工場ギガ・ベルリンで新たに1,000人を追加採用すると発表した。10月には週あたりの生産台数を7,500台へと引き上げる計画だ。欧州での登録台数は6月に前年比で倍増しており、二年続いた販売減からの明確な転換点が見えてきた。
ギガ・ベルリンは、ドイツの首都ベルリン近郊のブランデンブルク州グリュンハイデに建設されたテスラの欧州生産拠点である。テスラにとって欧州唯一の完成車工場であり、ここで生産されるのはModel Yのみだ。欧州市場向けのModel Yはこの工場が供給を担っており、域内の需要動向がそのまま稼働率に直結する立地にある。
3カ月で2,000人を増員、週7,500台へ増産
今回テスラが明らかにしたのは、木曜日に発表された1,000人の追加採用である。同社は4月にも1,000人の採用を発表しており、こちらは6月末までに着任する予定だった。この二度の発表を合わせると、わずか3カ月間で2,000人を新たに迎え入れる計算になる。急ピッチの人員拡大は、需要回復への自信の表れといえる。
生産目標も段階的に引き上げられている。4月の増強を経て、現在の目標は週6,000台だ。これを10月には週7,500台へと、25%引き上げる方針である。週7,500台というペースを年間換算すると約39万台に相当する。もっとも、ギガ・ベルリンが当初掲げていた年産50万台という最終目標には、まだ届いていない。
6月の登録台数が前年比で倍増
この強気の増産を支えるのが、欧州市場の急回復だ。6月の登録台数は前年同月比で倍以上に増えた。4月時点でも前年同月比67%増を記録している。これは、二年連続で販売が落ち込んでいた状況からの大きな反転だ。昨年は欧州販売が約27%減と苦戦しており、テスラにとって欧州は長く課題を抱える市場だった。
回復の背景には、複数の要因がある。まず、2月下旬以降、欧州各地で燃料価格が上昇したことだ。ガソリンや軽油の値上がりは、消費者のEVへの関心を高める直接的な動機となる。また、EV全体の普及も進んでいる。EU域内の新車登録に占めるバッテリーEV(BEV)の比率は、4月までで19.7%に達した。前年同期の15.3%から大きく伸びている。
北欧・西欧が牽引、構造的な追い風も
地域別では、北欧と西欧が特に好調だ。4月にはフランス、スウェーデン、デンマーク、アイルランドで前年比三桁増を記録した。欧州はもともと環境規制が厳しく、EV普及への政策的な後押しが強い地域である。燃料高騰という外的要因と、こうした構造的な追い風が重なったことが、今回の需要回復を後押ししたとみられる。
二年連続の販売減に苦しんだテスラの欧州事業にとって、今回の需要回復と増産は明るい材料だ。ギガ・ベルリンが当初の年産50万台目標にどこまで近づけるか、そして週7,500台への増産が予定通り10月に実現するかが、今後の焦点となる。燃料価格の動向やEV普及率の推移とあわせて、欧州市場の行方に引き続き注目したい。
参考:Tesla to hire 1,000 more Giga Berlin workers as Europe demand returns(Electrek、2026年6月25日)

