中国EV最大手BYDの海外販売が、2026年5月に16万644台と過去最高を記録した。前年同月比で80%増という急成長であり、月間の全販売に占める海外比率は42.6%に達した。国内販売が落ち込むなか、BYDは収益の軸足を着実に海外へと移しつつある。世界のEV市場、とりわけテスラとの競争にとって、この数字は何を意味するのか。
海外は急増、国内は失速
5月のBYDの海外販売台数は16万644台で、前年同月の8万9047台から80%増加した。前月の4月比でも19.4%伸びており、勢いは衰えていない。海外比率は42.6%で、前年同月の23.6%から大きく上昇した。4月の42.8%と並び、いまやBYDの販売のおよそ4割超が中国国外で生み出されている計算になる。
一方、乗用車の総販売台数は37万6990台で、前年同月の37万6930台とほぼ横ばいだった。全体が伸びていないにもかかわらず海外が急増したということは、その裏で国内販売が縮小していることを意味する。実際、国内販売は約21万6300台と推計され、前年同月の約28万7900台から25%ほど落ち込んだ。
年初からの累計(1〜5月)で見ても、この傾向は鮮明だ。海外販売は約61万5900台で前年同期比65%増。これに対し総販売台数は約138万台で前年同期から20%減少し、国内販売は約76万4200台と44%もの大幅減となった。海外で稼ぎ、国内では苦戦するという構図が、月次でも累計でも一貫している。
国内の過当競争が海外シフトを後押し
国内が振るわない背景には、中国EV市場の激しい競争がある。BYDの経営陣はこの状況を「過熱状態(fever pitch)」と表現し、業界は脱落者を生む「ノックアウトステージ」に入ったと述べている。値下げ合戦が続く中国市場では、自国の大手すら販売を伸ばしにくくなっている。だからこそBYDは、利益率を確保しやすい海外へと活路を求めているとみられる。
ここで日本の読者に補足しておきたい。BYDはかつて電池メーカーとして出発し、現在は新エネルギー車(NEV)の販売台数で世界トップクラスに位置する企業である。日本でも2023年から乗用車市場に参入しており、欧州や東南アジア、中南米などでも販売網を急速に広げている。今回の海外比率4割超という数字は、その世界展開がいよいよ本格的な収益貢献の段階に入ったことを示している。
テスラとのEV覇権争いへの影響
この動きは、EV市場全体、とりわけテスラとの競争という観点で重要な意味を持つ。テスラが米国・中国・欧州という大市場を主戦場としてきたのに対し、BYDは低価格帯から幅広い価格帯をそろえ、新興国を含む多方面へ同時に攻め込んでいる。中国国内での消耗戦を海外で補うBYDの戦略がうまく回れば、テスラがこれまで取りこぼしてきた価格帯や地域でシェアを奪う展開もありうる。グローバルなEV覇権争いは、もはや単純な国内シェアだけでは測れない局面に入っている。
BYDの5月の数字は、中国市場の厳しさと海外展開の成功という二つの顔を同時に映し出している。国内の過当競争が続く限り、BYDの海外シフトはさらに加速する可能性が高い。海外比率が今後5割を超えてくるのか、そしてテスラや既存の自動車メーカーがこの攻勢にどう応じるのか。世界のEV勢力図を占ううえで、BYDの月次販売は引き続き注目に値する指標となるだろう。
参考:BYD Overseas Sales Hit New Record in May, Exceed 40% of Total Volume(Electric Vehicles、2026年6月10日)

