テキサス死亡事故、FSDが原因ではないとNTSB

テキサス州ケイティで起きた死亡事故で、時速70マイル超のテスラ Model 3 が縁石を乗り越え、民家の壁を突き破って76歳の女性が亡くなった。運転手は当初、警察に自動運転支援機能(FSD)を作動させていたと説明していた。しかし米国家運輸安全委員会(NTSB)の調査は、原因がFSDではなく、運転手自身によるアクセルの踏み込みだったと結論づけた。テスラにとっては免責的な結果だが、別の当局による調査は今も続いている。

民家に突入した Model 3

事故が起きたのは、記事公開時点で「先月」とされる2026年6月ごろ。場所はテキサス州ケイティにある民家だった。テスラ Model 3 は時速70マイル(約112.6キロメートル)を超える速度で走行し、縁石を乗り越え、芝生を横切ったうえで、レンガ造りの住宅の壁を突き破ったという。

このとき家の前室に立っていた76歳の女性、マーサ・アビラ(Martha Avila)さんが巻き込まれ、死亡した。突然の高速の突入によって、逃げる間もなかったとみられる。

焦点となったのは、事故当時にテスラのFSDが作動していたかどうかだった。運転手は警察に対し、自動運転支援ソフトウェアをオンにしていたと説明していた。もしその通りなら、システム側の欠陥が問われる可能性がある事故だった。

しかし、NTSBの調査結果はこの説明を覆した。調査官によると、運転手はアクセルペダルを強く踏み込み、車両を全開の速度まで加速させていた。つまり、たとえFSDが有効になっていたとしても、運転手のアクセル操作がそれを上書き(オーバーライド)していたことになる。NTSBは、自動運転支援機能そのものが事故の原因ではないと判断した。記事では運転手の氏名や、立件・起訴の有無については触れられていない。作動していたとされるFSDのバージョンなど、技術的な詳細も明らかにされていない。

NTSBとNHTSA、二つの機関の役割

ここで整理しておきたいのが、米国でテスラの自動運転を巡る調査に関わる二つの機関の違いである。NTSBは事故そのものの原因を独立して調査・分析する機関だ。今回、この事故についてFSDが原因ではないと結論づけたのはこのNTSBである。

一方で、テスラのFSDを対象に複数の調査を継続しているのは、別の機関である米道路交通安全局(NHTSA)だ。NHTSAは規制権限を持ち、必要に応じてリコールを命じることができる。両者は役割が異なり、今回のNTSBの結論が、NHTSAの調査を止めるものではない。

そのNHTSAは、2024年に始めた自動運転支援機能に関する調査を「エンジニアリング分析」の段階へと格上げしている。これは調査の深度が一段上がったことを意味し、最終的には320万台のリコールにつながる可能性があるとされる。

さらにNHTSAは、テスラ車が自動運転技術を使って交通安全法規に違反したとされる58件の事案を調査している。これらの事案では、十数件の衝突事故や火災、そして20件近くの負傷が生じたという。加えて同局は、過去10年間にテスラの自動運転または運転支援技術に関する「特別衝突(special crash)」調査を46件実施しており、そのうち十数件では少なくとも1人の死者が出ているとされる。

個別の原因究明と技術全体の評価は別

今回のケイティの事故については、NTSBがFSDを原因から外したことで、テスラにとっては一つの重荷が下りた形となる。運転手の説明とは異なり、システムではなく人間の操作が高速走行を招いたという結論だからだ。

ただし、それは自動運転技術全体への疑問が晴れたことを意味しない。NHTSAによる複数の調査は継続しており、320万台規模のリコールに発展し得る分析も進行中だ。個々の事故の原因究明と、技術全体の安全性評価は、あくまで別の問題として並行している。テスラのFSDを巡る当局の視線は、今後も厳しく注がれ続けることになるだろう。

参考:Tesla FSD didn't cause fatal Texas crash—the driver floored the accelerator, investigators say(Fortune, 2026-07-16)