中国EV最大手のBYDが、欧州市場への攻勢をさらに一段引き上げる。同社は今後3年間で「欧州市場専用に設計したモデル群」を投入する計画を明らかにした。第1弾は、英国で発売予定のプラグインハイブリッド(PHEV)「Dolphin G」だ。これまでの中国市場向け車両を欧州に持ち込む手法から、欧州の街並みに合わせて一から設計する戦略へと舵を切る。現地生産も本格化し、BYDの欧州戦略は新たな段階に入った。
「全長4.3メートルより小さく」欧州専用設計へ
BYDのステラ・リー(Stella Li)副社長は、欧州向けモデルの方向性をはっきりと示している。「クルマを大きくするな。欧州向けには違う。全長4.3メートルより小さくする必要がある」というのが同社の方針だ。さらに「今後3年間で、クルマの設計はもっと欧州向けになっていく」と述べ、欧州を意識した専用設計を進める考えを明確にした。
背景には、中国メーカーの車両が年々大型化しているという事情がある。中国市場ではサイズの大きなモデルが好まれる傾向にあるが、パリ、ミラノ、ローマ、ロンドンといった欧州の都市部では、狭い道路や駐車事情からコンパクトな車両が求められる。BYDが投入する欧州専用モデルは、こうした都市環境に適応させたBセグメント・Cセグメントが中心となり、全長4.3メートル未満のコンパクトな車両に焦点を当てる。
第1弾「Dolphin G」とハンガリー工場での現地生産
第1弾となる「Dolphin G」は、2026年6月に登場する欧州設計のPHEVだ。英国では7月のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでお披露目される。電気自動車(EV)の「Dolphin Surf」に対する選択肢として位置づけられ、英国で買えるPHEVのなかで最小級のモデルになるという。なお、価格や航続距離、詳細なスペックは現時点で公表されていない。
現地生産の体制も動き出している。BYDのハンガリー工場は2026年内に稼働を開始し、まずはEVの「Dolphin Surf」と「Atto 2」を生産する。「Dolphin G」についても、その後ハンガリー工場で生産される可能性がある。今後投入される欧州セグメント向けの各モデルも、ハンガリーでの生産が見込まれている。
欧州での現地生産は、BYDにとって大きな意味を持つ。欧州連合(EU)は2024年、中国製EVに対して通常の関税に上乗せする追加関税を導入した。中国から輸出する車両はこの追加関税の影響を受けるが、欧州域内で生産すれば、その負担を回避できる。ハンガリー工場の稼働は、関税対策と供給網の安定化を同時に狙う一手だといえる。
欧州勢の強み領域で正面から競う
加えて、欧州市場ではテスラや地場の欧州メーカーとの競争が激しさを増している。欧州の消費者ニーズに合わせた専用設計と現地生産をそろえることで、BYDは「安価な中国製の輸入車」というイメージを脱し、欧州ブランドと正面から競う体制を整えようとしている。コンパクトな都市向けモデルという領域は、これまで欧州勢が強みとしてきた分野でもある。
BYDの欧州専用モデル戦略は、中国メーカーが単なる輸出から現地化へと進化していく流れを象徴している。専用設計・現地生産・関税回避という三つの要素がそろえば、欧州市場でのBYDの存在感は今後さらに高まる可能性がある。日本車を含む既存メーカーにとっても、欧州コンパクトEV・PHEV市場の競争は一段と激しくなりそうだ。第1弾の「Dolphin G」が欧州市場でどう受け止められるか、その評価が今後の攻勢の試金石となるだろう。
参考:BYD to launch new wave of European-specific models(Autocar、2026年6月25日)

