米xAIは2026年7月29日、音声AIモデルの新版「Grok Voice Think Fast 2.0」を発表した。前世代の「Think Fast 1.0」から応答速度と文字起こし精度を大きく高め、対話の自然さも向上させたという。8月5日には標準APIが新版へ自動的に切り替わる。
ベンチマークで旧版・競合を上回る
xAIによると、新版は推論力・文字起こし精度・対話能力の3点を強化した。第三者ベンチマーク「Artificial Analysis」による音声対話の総合品質指数では、新版が82.9%を記録した。旧版の75.7%を上回り、競合の「GPT-Realtime-2.1」(79.1%)や「Gemini 3.1 Flash」(69.5%)も上回る結果だったとしている。応答開始までの時間(Time to First Audio)は0.70秒だった。これは旧版の1.25秒、Gemini 3.1 Flashの2.98秒より短い。
文字起こし精度も大幅に向上
文字起こし精度については、24言語・数千の短いフレーズを用いた評価を実施した。音声認識サービスの「Deepgram Nova 3」「ElevenLabs Scribe v2」に対して1.5〜2.0倍、旧版に対しても1.4倍の精度向上を確認したという。特に背景雑音や電話回線の音質劣化がある環境では、専用の音声認識モデルとの差が約10倍まで広がるとしている。
同モデルは音声で応答しながら同時に推論する仕組みを持つ。この並行処理により、応答速度を落とさずに賢さを高めた点が特徴だという。さらに1回の応答に使う推論トークン数を旧版の0.4倍に抑えた。この効率化により、ツール呼び出しがユーザーの発話の途中で完了するほど高速化したとしている。
人間らしい対話設計とAPI切り替え
対話能力については、実際の人間の会話パターンに近づける強化学習を実施した。短い文で話し、一度に1つずつ質問し、無駄な言い回しを避けるよう訓練したという。これにより、複雑な作業を裏側で進めながらも、会話全体はシンプルで流れるようなやり取りになるという。実例として、衛星通信サービスStarlinkの窓口でA/Bテストを行い、販売の成約率とサポートの自己完結率がともに向上したと明らかにした。
新版は8月5日付で、標準APIエンドポイント「grok-voice-latest」の参照先が「grok-voice-think-fast-1.0」から「grok-voice-think-fast-2.0」に自動的に切り替わる。既存ユーザーが対応作業をする必要はなく、旧版を使い続けたい場合は「grok-voice-think-fast-1.0」を明示的に指定すればよい。料金は音声1分あたり0.08ドルで、旧版から変更はない。
音声AIは応答速度と精度の両立が課題とされてきた。xAIは音声と推論を並行処理する設計で、速度を保ちながら精度を高めた形だ。今後は顧客対応の自動化など、リアルタイム性が求められる場面での活用が広がりそうだ。

