SpaceXが宇宙空間に展開するAIコンピューティング衛星「AI1」を正式に発表した。翼幅70メートル(ボーイング747より広い)、高さ20メートルという巨大な構造物で、最大150kW・常時120kWのAI計算能力を軌道上から提供する。2027年初頭にプロトタイプ2基を打ち上げ、同年末には宇宙コンピューティング能力1GWの商業展開を目標とする。最終的には100万基の衛星コンステレーションを形成し、地上データセンターに匹敵する計算コストの実現を目指す。
モジュール交換式の設計と自社製造工場「Gigasat」
AI1の特徴はモジュール型の交換可能な計算ペイロードで、Starlink V3の太陽電池やレーザーリンク技術を流用している。熱管理には110平方メートルの展開式液体ラジエーターを採用し、放熱密度は1,400W/m²を実現する。製造拠点はテキサス州バストロップ郡の約1,000エーカーに建設中の「Gigasat」工場で、太陽電池・基板・衛星構体の一貫生産に加え、2026年末には半導体パッケージング工程、長期的には550億ドル規模の「テラファブ」チップ製造まで視野に入れている。
経済性の検証はこれから——地上データセンターとのコスト競争が鍵
Starship 1機あたりAI1衛星を30〜50基搭載できる計算になるが、軌道上コンピューティングの経済性はいまだ未検証だ。地上の大規模データセンターでは電力コストが30〜60ドル/MWhであるのに対し、宇宙での計算コストが競争力を持てるかどうかはまだ証明されていない。打ち上げコスト・熱制御・通信遅延など複数の課題があり、アナリストも「生産規模での経済性は未確認」と指摘している。
それでも、地球規模の電力不足と土地制約に悩む地上データセンターの代替として、宇宙コンピューティングは新たなカテゴリーを切り拓く可能性を秘めている。SpaceXがIPOで調達した750億ドルの使途として、AI1プログラムへの大規模投資が見込まれており、Starshipの打ち上げ頻度が上がるほどこの構想の実現可能性も高まっていく。

