OpenAIがChatGPT Cyberを発表、10億ドル支援も
OpenAIがサイバーセキュリティ向けの新モデル「ChatGPT Cyber」を、防御プログラム「Daybreak」の最上位層に提供すると発表した。あわせて10億ドル規模の支援策も打ち出した。一方で、攻撃側との間にある不均衡を指摘する声は根強い。TechCrunchの報道をもとに整理する。
AIが見つけたLinuxの重大な脆弱性
発端は、Charge Roboticsの最高技術責任者(CTO)で共同創業者のマックス・ジャスティック氏の事例だ。同氏はOpenAIのモデルを使い、UbuntuなどのLinuxサーバーが乗っ取られかねない重大な脆弱性を見つけた。識別番号はCVE-2026-109518である。
使ったのは7月に公開された「GPT 5.6 Sol」だ。防御側向けのプログラム「Daybreak Blue」を通じて利用した。同氏は以前にも同じコードベースで脆弱性を見つけていたが、今回は数時間で結果が出たという。報告を受けたDebianプロジェクトがパッチを出し、悪用の証拠は確認されていない。ただし複数の脆弱性を探すため、サブスクリプションとトークンに約5,000ドルを費やしたとされる。
Daybreak Redへの新モデル提供と10億ドルの支援
OpenAIは新モデルを、Daybreakの最上位層「Daybreak Red」の利用者に提供する。この層は攻撃的セキュリティ研究者向けに、脆弱性調査のツールを備える。前日には同モデルでLinuxカーネルを調べ、948件の潜在的な問題を見つけてパッチを準備したと発表した。Firefoxでは81件の新種の脆弱性を見つけたという。
OpenAIはDaybreakを、あらゆる規模の組織、独立研究者、オープンソースの保守者へ広げる方針だ。10億ドル規模の取り組みでは、電力網や水道などの重要インフラを守る専門家を支援する。
残る攻撃側との非対称性
課題も指摘されている。ジャスティック氏は、Daybreak Blueが最近「弱められた(nerfed)」ため、脆弱性発見に使いにくくなったと述べる。悪用を防ぐには利用者の厳格な審査が要る。しかし防御側が最先端モデルを使えない一方、攻撃者は安全装置を外したオープンウェイトモデルを使える。この不均衡が専門家から指摘されている。参加する専門家は「数千人」で、潜在的な攻撃者の数に比べて少ない。
OpenAIの研究者エリック・ウォレス氏は、同社が最先端の計算資源の大きな部分を、オープンソースの脆弱性発見とパッチ作成に無償で振り向けていると説明した。Linuxの脆弱性探索には約120万ドルがかかったとされる。流体力学の難問の解を探すために使ったとされる約600万ドルのトークン支出と比べると、規模は小さい。
AIによる脆弱性発見は、防御側にも成果をもたらし始めた。だが記事は、攻撃側との非対称性が残ると指摘する。インフラを守る時間は限られており、より強い緊急性が必要かもしれないと結んでいる。審査の厳格さと利用の広がりをどう両立させるかが、今後の焦点になりそうだ。
参考:OpenAI released a new cybersecurity model. Is that enough?