マスク氏、AI事業収益が9月にSpaceX全体を上回ると発言

起業家イーロン・マスク氏は、宇宙開発企業スペースX(SpaceX)の全社員向け動画で、AI関連事業の収益が早ければ9月にも他の全事業の収益を上回るとの見通しを語った。米投資メディア「モトリーフール(The Motley Fool)」は、この発言の裏付けとなる数値や実現可能性を分析している。

AI事業の急成長、第2四半期実績が裏付け

マスク氏はX上で公開された約30分間の全社員向け動画で、「AI関連の収益は、おそらく9月には——つまり来月には——スペースXの他の全事業の収益を上回るだろう」と述べた。

スペースXの2026年第2四半期の総収益は78億1000万ドルで、前年同期比92%増だった。このうちAI事業のセグメント収益は25億6000万ドルだった。通信事業(スターリンク〈Starlink〉)と宇宙事業を合わせた収益は52億5000万ドルだったという。

マスク氏は同じ動画で、AIモデル「Grok」を、社員の業務内容を含む社内の全情報を使って訓練する計画も明らかにした。記事はGrokをスペースXのAIモデルと位置づけている。

米金融大手ゴールドマン・サックスは、2026年通期のAI事業収益を156億ドルと試算している。マスク氏はさらに10ギガワット規模のAI関連インフラ構築を目標に掲げている。実現すれば2028年までに年間300億〜500億ドルの収益を生む可能性があるという。

電力・半導体・資金・契約に残る課題

一方でモトリーフールは、この見通しの実現には懐疑的な見方を示す。第一に、電力の確保が大きな制約となっている。データセンター「コロッサス1」「コロッサス2」を稼働させるメタン排出型ガスタービンには、周辺からの反発も出ているという。

第二に、AI向け半導体(チップ)の不足も課題だ。計画の実現には、エヌビディア(Nvidia)が生産するチップのかなりの割合を確保する必要があるとされる。

第三に、資金面の課題がある。スペースXは前四半期、AI関連だけで250億ドル超を投資した。8ギガワット以上の増強を18カ月以内に行うにはさらなる支出が必要だ。2027年までに必要な支出額と得られる収益の間には、大きな差が生じる可能性があるという。

第四に、契約面のリスクも指摘される。AI関連顧客との契約は、いずれの当事者も90日前の通知で解除できる条件になっている。多額の設備投資をした後に、顧客を失うリスクも残るとされる。

記事の執筆者は、「マスク氏が示す方向性自体は実現可能だが、その時期と規模には懐疑的な見方が必要だ」と結論付けている。

マスク氏の発言は、スペースXにおけるAI事業の急成長ぶりを裏付けるものだ。ただし電力・半導体・資金・契約面での課題も多く、実際の収益データが発言通りに推移するかどうかは今後の焦点となる。

参考:Elon Musk Says AI Revenue Will Eclipse the Rest of SpaceX by September. Here's What Investors Need to Know