Claudeが自律設計、15標的中14で結合剤生成に成功

Anthropicは2026年8月、AIモデルの「Claude」が医薬品開発の初期段階にあたるタンパク質結合剤(protein binder)の設計を自律的に行い、15の標的タンパク質のうち14個で結合剤の作成に成功したと発表した。従来は専門家が数カ月かけて行う工程を、AIが自ら計算・最適化・検証まで担って高速化できることを示す実証実験である。

Claude Opus 4.8とMythos Previewが自律設計を実施

実験では「Claude Opus 4.8」と「Mythos Preview」という2つのモデルを、Anthropicの研究環境「Claude Scienceワークスペース」で稼働させた。標的にはEGFR、PD-L1、TNFα、VEGF-Aなど既に広く研究され結果を比較しやすいタンパク質に加え、より新しい標的である15-PGDHやGDF-8も含めた。

Claudeは標的タンパク質上の最適な設計位置の選定から、構造・配列設計、インシリコでの最適化を複数サイクル繰り返す作業までを、人間の関与を最小限にして自律的に実行した。生成した設計は新規性・多様性・発現可能性・溶解性でスクリーニングした。その後、バイオ企業のAdaptyv BioとTwist Bioscienceによる独立した湿式実験で検証した。

業界標準を上回るヒット率を記録

成果として、全標的を同時に扱う「マルチターゲットモード」では、Mythos Previewが26.7%、Opus 4.8が22.6%のヒット率を記録した。業界標準とされる10〜15%を上回る水準である。標的を1つずつ扱う「シングルターゲットモード」ではMythos Previewが35.1%とさらに高い値を示した。全体では1,320個の設計から354個の結合剤を生成し、15標的中14標的で結合剤の作成に成功した。少なくとも6標的では高親和性の結合剤を、4標的では既存の公表最高値と同等以上の親和性を持つ結合剤を得た。

代表例として、RBX1向けの設計はシングルターゲットモードで40%のヒット率を達成した。これはコンペティション「Adaptyv Bio」の参加者平均3.7%を大きく上回る水準である。TNFαでは、複数の専門家グループが苦戦していたヒト・カニクイザル・マウスの3種に交差反応する結合剤の設計に成功した。一方、天然に存在しないβ-バレル型タンパク質「BBF-14」や、柔軟で親水性の高い表面を持つマルトース結合タンパク質(MBP)では成果が限定的だった。親和性が低いか、結合が確認できない設計にとどまった。

NMR・LC-MS解析も自律的に実行

同時に、別の実験結果も発表された。一般公開モデルの「Claude Opus 5」が、核磁気共鳴(NMR)分光法と液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)のデータ解析を自律的に行った。生データから化合物の構造同定と純度測定までを約19〜25分で完了した。純度測定は、契約研究機関の結果と0.07ポイント以内の差にとどまった。従来は手作業で数十分から1時間を要する工程である。

Anthropicは今後、タンパク質設計キャンペーンの特性評価を継続し、生命科学研究者向けのアクセスプログラムを準備するとしている。一方で自律的な生物学的発見能力は悪用リスクも伴うため、一般公開モデルでは提供しない。信頼されたアクセスの枠組みを通じて展開する方針だ。

参考:Claude accelerates protein design